インテリア迷子になった時のアドバイス

インテリア迷子になった時のアドバイス

Apr 13、2023岩﨑敬太

 

桜の季節も終わりを迎え、気温もずいぶん暖かくなってきましたね。気分一新、お部屋の模様替えをお考えの方も多いのではないでしょうか。また、お引越しやご新築を検討中の方もどんなインテリアにしようかなと情報収集されていることと思います。


インテリア、何を参考にしていますか?

その情報収集ですが、世の中にはたくさんの情報が溢れていますね。インスタグラムやピンタレストを開けばありとあらゆるテイストや様々なインフルエンサー、メンターの考え方、などなどが洪水のように押し寄せてきます。指一本でさくさくハイレベルで大量の情報にアクセス、しかも無料でなんて、本当に便利な時代になったなと思います。



せっかくならおしゃれな空間をつくりたいですよね。どうせなら使うお金を最大限に活かしたい。当然のことです。



普段はインテリアの事など考えたことはなかったけれどご新築やお引越し、模様替えなどをきっかけにじゃあどうしようかとなった時に、昔でしたら書籍を読んだり家具屋さんに行ったりという情報収集の手段はネットへと置き換わりました。近年インテリアについてファッション的な要素が強まってきたのもネットというビジュアルを重視した販売戦略に影響を受けているは言わずもがな。



20年前なら家具屋さんでは「この無垢材の天板は50mmも厚みがあって」とか「回転式の椅子でしかもキャスターがついていて楽」とか「UV塗装だから一番硬度があって傷がつかない」とか、高スペック=正義でした。僕も最初に入社した家具屋さんではそういう事をセールストークにするよう先輩やメーカーさんに教わりましたし実際に高スペックでお値段お手頃という商品が一番売れていました。



ですが現在は選ぶ基準が全く違います。むしろ今風のすっきりシンプルな家に天板50mmで脚も太い、ずんぐりしたテーブルはいくら贅沢な材料の使い方をしていたとしても似合わない場合の方が多いと思います。

 

インテリア迷子からのネット情報はリスクもあります

ただ、ここに落とし穴があるようにも思います。これからお家を建てられる方が特に、という言い方になりますがEPISOの場合ですと20代後半~40代の方が多い印象です。ご結婚して仕事もある程度安定したポジションが見えてきたので30年や35年ローンを組んでいよいよという感じですね。


そういうご年齢の方ですと実体験として一番なじみのあるインテリアとしてのは幼少期から独立されるまでのまさに上記で述べたようなスペック主義の家具たちに囲まれた生活。失敗できない自分の城は「振り返れば別に不便も不満もなかったけれどまああれじゃないよね」というのは分かっているもののじゃあ「何が正解か」が分からないという方、案外多いのではないでしょうか。


結論から言えば個人的には「正解なんて無いので自由にやっちゃってください」が正解だと思ってしまっているのですがそういうわけにもいかないのが家具屋さんですので話を進めますと、正解が分からない場合に手っ取り早く正解を見つけようとするとネットが最適な回答集となるわけです。


そこで落とし穴と前述した部分なんですが問題が発生します。それは「他人の価値観に頼ることになる」という事です。知らず知らずのうちに世間的には何が良いとされているかを探しているのです。ネットはそのコンテンツの制作者からすれば見られてなんぼの世界。なのでいかに世間の価値観に迎合しているか、目を引けるかのコンテンツが大半です。ぱっと見ではわからない場合も多いですが、相当金額を掛けたインテリアは当たり前ですが見栄えがします。それらを「おしゃれ過ぎてはぁ~ってなる」というようなカジュアルな言葉で伝えたり「家具コーディネートでやっていはいけない5つの事」のような、いやそれ好みの問題という部分に優劣があるような表現をしたりというSNS投稿などは見たことがあるのではないでしょうか。


結果、予算や面積の都合で再現性がなく参考にしたインテリアの劣化版になってしまったりおしゃれビジュアルを作るための禁止事項を守った代償に使い勝手の良さが失われてしまったりしたらどうでしょうか。お家は建った時がゴールではなくこれから何十年も使っていくものです。何十年もの間、「何か違う気がする・・・」というもやっとしたストレスに耐えることができるでしょうか。


例えば床も建具も家具もすべて白とグレーでそろえたホテルのような整然としたミニマリズムの空間。最高です。でもそれは「そのままの状態を保ったまま暮らせるなら」という条件付きです。実際にはスーパーの袋がキッチンの上に置かれる場合もあります。amazonで届いた段ボールが子供の工作物としてリビングに居座ることもあれば携帯電話の充電コードが床にだらんと伸びてているかもしれません。ある程度設計で回避できる部分もありますがそれでも片付けるのはホテルの従業員さんではなく自分です。子供がおもちゃで遊ぶたびに「片付けなさい!」「汚さないで!」と怒っているのではせっかくの新居、何のために何千万円もかけて家族の居場所をつくったのか分からなくなってしまいます。(もちろん片付けなどの教育をすることは大切なことですが)インテリアに多少の遊びや幅を持たせて、ある程度の生活感を許容できるというのも立派な「機能」なのではないでしょうか。

 

自分達の人生の哲学を形にすることを意識しよう

自分たちが理想とする暮らしと空間の役割がマッチしているかどうかは人それぞれのはずです。ネットの情報はとても有益ですが正解不正解という基準で取り込むと良い結果にならない場合があると思います。


それは僕たちのような家具屋やお家の設計士さんの言葉も同様で、あくまでも住むのは自分で僕たち提案側の人間ではありません。プロの意見を聞くにしてもそれは1つのアイデアとして聞いてもらった方がいいですし、この人に任せたいと思った場合でもその言葉の中にしっくりこない部分があるようならそれはぶつけてもらった方がプロとしても助かるのです。それをもとにより精度の高いお客様にあったご提案ができます。プロの意見を鵜吞みにしていいのはこの人、この会社の作品に住みたいという覚悟がある場合だけです。


もし自分たちのこれから過ごす数十年にぴったりの空間を作りたいというコンセプトで行くなら答えはご自身の中にあります。空間づくりやインテリア選びはその人の人生の哲学が自然と出るものです。その上でまず自分たちの心の中の欲求を可視化するために提案をしてもらう、使い勝手やコスト面でのアプローチや、色彩やボリュームのバランスの美しさを示してもらうという部分でプロの意見を聞く。そんなふうにEPISOを使ってもらえればいいんじゃないかと思っています。その上でやっぱりミニマルでホテルみたいな部屋じゃないと落ち着かないのであればそれがベストの選択肢。そのご希望に沿ったご提案を全力でさせていただきます。



長々書いてしまいましたがネットのインテリア事例を参考にするときはほどほどにして自分の中に目を向けよう、というお話でした。

 

 

More articles