しっとりとした質感が魅力のオイル仕上げの家具も、年月が経つとやはり木肌がくたびれてしまいます。
しかし専門的なガンスプレーで吹き付けるラッカーやウレタン塗装の家具と違って、一部分だけでも気軽にお手入れができるのがオイルフィニッシュの特徴です。
メンテナンスをすればいつものアイテムへの愛着もグッと高まるもの。
これからも長い付き合いになる木製家具。難しそう、と言わずに是非ともオイルメンテナンスに挑戦してみましょう。
”まずは必要なアイテムを準備。”
オイル仕上げの家具のメンテナンスに準備するものは以下の通り。特別なものはなく、それも近所で手に入ると思います。
オイルメンテナンスは、空気中で固まる性質の植物油を染み込ませ、乾燥してしまった木肌に潤いを与え保護するという仕組みです。
・家具用オイル(後述)
・布(ウェス)2~3枚
・サンドペーパー(紙やすり)120番・240番 各1枚
”オイルにも色々ありますが迷ったらこれ。”
EPISOではHolzlasurというドイツのブランドのオイルを使用して中心に使用していますが、一般のご家庭では手に入りにくい上に少量で販売していないためコストがかかりすぎるかもしれません。
日常的にはホームセンターなどに売っている「ワトコオイル」のナチュラル色(透明)が手に入りやすく使いやすいと思います。
それも手に入らない!という場合は、やや保護効果は落ちますがスーパーなどで販売されている食用のえごま油、亜麻仁油も同様にお使いいただけます。これらはどれも空気中で固まる性質を持っています。
あとはオイルを塗り込むのと拭き取り用に適当な布を2~3枚ご用意ください。Tシャツの切れ端なんかで十分です。きちんと用意したい場合はホームセンターで「ウェス」という拭き取り用の布を購入しましょう。
塗装前の下地処理にサンドペーパー(紙やすり)を二種類。こちらもホームセンターで購入できます。
裏に番手(細かさ)が書いてあるので、120と240をご用意ください。
” 準備ができたら、メンテナンス開始。”
チェアの背もたれを実際にメンテナンスしていきましょう。今回はデンマークで仕入れたメンテナンス前のヴィンテージチェアを題材としてみます。
数十年前に作られたチェアなので、色褪せや汚れが目立ちます。
多少キズも気になります。せっかくなので今回はこちらも処理していきましょう。
”それでは初めていきましょう。”
まずはサンドペーパーで表面を削ります。削ったところは白っぽくなりちょっと不安になるかもしれませんが、あとでオイルを塗って綺麗になるので大丈夫です。
最初に120番のサンドペーパーを使います。木目に沿って力を入れすぎず一定の強さで擦ってください。
”突板と無垢板の違いにご注意を。”
表面を削って平らにすることでオイルの馴染みがよくなります。消したいキズがある場合は120番の段階で見えなくなるまで削りましょう。
ただし突き板と無垢材では削り方に違いがあります。
突き板は合板などの上に薄い無垢材を貼り付けたもの。対して無垢材は木を切り出したものです。突き板は割れや反りに強く薄いパーツに向いていて北欧ヴィンテージなどにはよく使用されています。
木材の表面と切り口を見て木目が繋がっていれば無垢材、繋がっていなかったり積層が見えている場合、切り口に別の木が貼り付けてある場合は突き板です。
突き板は1箇所を削りすぎると薄い表面材がなくなり下層の合板が見えてしまいます。削る際は慎重に少しずつ削ってください。ちなみに今回の施工箇所は突板です。チェアの背もたれなど曲線を描いている板はおおむね突板の場合が多いですね。無垢板から曲面を削り出して製造するのは手間がかかり材料のロスが多くなってしまうためです。
話を戻してどうなったら削りすぎかの判断は少し難しいですが削っているのに表面が凸凹してきたら削り過ぎのサインです。
無垢材は全てが同じ木ですので下地が露出する心配はないですがついつい傷の部分のみを強く削りすぎると凹んだような感触になってしまいますので注意してください。
古い表面が削れて均一に白くなったら、240番のペーパーに移ります。
同じように削りますが、先ほどよりもなめらかな手触りになるはずです。
重点的に削った部分はオイルを塗った際にトーンの差が出て白っぽくなりやすいので、サンドペーパーの番手を細かくするごとに全体的に馴染むように削る範囲を広げて削り跡をぼかします。
キズが消えたかチェックしたい場合は、軽く水を含ませた布で拭いてみます。この時キズが目立たなくなっていればOKです。
この濡れた状態が仕上がりの見え方とほぼ同じになりますので色むら感もチェックしておきましょう。
水拭きをした後は乾燥させてください。その際に表面が毛羽だったな、という感じになったらもう一度やすりで軽くこすり乾拭きをしておきます。
なお、キズにこだわりがなければこの濡らしての確認作業は不要です。乾拭きで削り粉を拭き取ったら、下地処理は完成です。
”いよいよ次はオイル塗装です。”
塗る部分を十分に濡らすくらいの量を布にとります。塗る面積が多い場合は別の容器に移して使いましょう。
オイルは肌への刺激は少ないですが、気になる方は料理用のポリエチレン手袋を着用するといいでしょう。
木目に沿ってオイルを塗っていきます。多い分はあとで拭き取ればOKなので、思い切ってたっぷりと濡らしましょう。 塗った部分が潤っていくのが見た目にわかるのは気持ちがいいものです。ふちの部分も忘れずに。
オイルを塗ったあとは明らかにしっとり感が蘇ります。
気になるキズもほとんど見えなくなりました。
30分くらいしたら、新しい布を使って余分なオイルを丁寧に拭き取ります。やや強めにこするのがコツです。
拭き終わっても乾燥するまでベタつきは残るので、1~2日は触らないでそっとしておいてあげましょう。
”しっかり乾燥したら完成!”
見事にオイル仕上げのしっとりとした表情が蘇りました!お疲れ様でした。
なお、ラッカー塗装やウレタン塗装などの塗膜がある塗装が施されている場合は今回の方法ではきれいに治りません。専門の塗装業者さんでの全剥離と再塗装が必要です。一般の方は部分補修には手を出さない方が無難ですのでお気をつけください。
オイルフィニッシュの家具はユーザーがメンテナンスを繰り返しながら育てていくのが醍醐味です。
メンテナンスの手間は確かにありますが使い込んでお手入れをすることで、味わい深さも増していきます。長い人生のパートナーとして大切に扱ってあげてください。
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